覚悟した方がいい

中東の反政府運動が拡大を分析するマスコミはその要因を長期の独裁政権としているが、現実には食料高騰などインフレが原因である。サウジアラビアアルジェリアの政府は自国に反政府運動が拡がらないよう小麦などの食糧類を大量に買い付けて価格安定の準備をしている。バングラディシュやインドネシアなど東アジアのイスラム諸国も、国際市場でコメを買い集めているという。

日本ではデフレ傾向が納まる気配がないのに、世界は深刻なインフレを心配しているのだ。
先進国はリーマンショック以来、不況対策と金融救済のため協調して低金利政策をとっている。この政策では物価がすこし上がると実質利回りはマイナスになってしまいかねないから、投資家は穀物原油・鉄鋼などの現物資産を買う傾向になっていく。
現実に国際的な穀物価格は高騰している。ヘッジファンドなどの投機資金が先物市場に流入して価格をつり上げているようだ。総合穀物企業カーネギーの利益は30%も増加した。原油高による影響は日本のガソリンスタンドの値段表を見れば実感できる。国際鉄鋼価格は今年66%も値上がりするという予測がある。鉄鉱石と石炭の価格が上昇しているからである。

インフレになると通貨当局は金融引き締めにかかる。利上げをするのが常套手段なのである。タイの中央銀行は7ヶ月間に4度利上げをしたし、中国・インド・韓国・オーストラリアなどが昨年後半から利上げを繰り返している。経済成長が続くこれらの国と低金利政策を続ける低成長の欧米や日本との金利差が大きくなっている。米国などの巨額資金が中国などに流入してインフレはさらに加速することになるから、準備金を積み増しして資金調節している。

食糧不足を実感していない日本ではピンと来ないことかも知れないが、世界では農地の値上がりを見越して農地買収が盛んに行われている。中国資本が日本の水資源を買いあさっているという話がニュースになっていたが、その中国は海外に210万ヘクタールの農地を確保したとされている。食糧だけではなく農地も高騰していくだろう。インデペンデント誌によると英国政府は食料価格が今世紀の半ばには50%値上がりするだろうと報告書を出している。

世界的に資源が値上がりしている。日本は円高によってそれが緩和されているのかも知れない。しかし、いずれこの高騰は我々の生活に大きな影響を与えるだろう。不況の上にインフレである。
おそらく日本はこの危機を回避することができないから覚悟を決めた方がいいと思う。財政なんかに振り回されている場合じゃないのだ。