日本人の国民性

 文科省所管の統計数理研究所は10月30日、国民性調査(2013年)」の結果を公表した。
「国民性の研究」統計数理研究所 http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/table/index.htm

 様々な質問項目があり、その回答は地域・年齢・性別などに分けてみることもできる。集計表かグラフを選ぶことが出来るからし、操作はボタンをクリックするだけなので簡単。暇つぶしにはなる統計だ。

 ただし、この統計には重大な問題点がある。この統計の元になっている調査である「日本人の国民性調査とは」 http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/index.html から、調査実施の概要を選び 回収率と調査不能の状況を確認してみる。
 回収率 http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/page9/page13/index.html
 調査不能の状況 http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/page9/page14/index.html

 1953年から5年ごとに13回調査しているがその回収率は83%から50%に下がっている。サンプリングに選んだ人から調査できなかった理由をまとめているのが「調査不能の状況」だ。不在や死亡病気は調査に対するバイアスを測ることは出来ないが「拒否」には何らかの意思が働いていると考えられる。そして「拒否」した人は調査不能に人のうち7%から59%に上がっているのだ。当初選んだサンプリング全体でみると1%から30%になったのである。
30年前の調査でも9%だった拒否率は30%まで上昇している。


 しかし、報道ではこれを取り上げているところはないようだ。ウェブからマスコミ大手の見出しを比べて見る。

読売 日本人の国民性は…「人の役に立ちたい」45%
朝日 若者は安定志向、シニアはチャレンジ精神 傾向くっきり
毎日 「他人の役に」45%「自分のことだけ」超え
産経 「生まれ変わるなら日本」8割超 20代で急増、  日本人は「利他的」、過去最高の45% 初めて「利己的」上回る
日経 日本人の国民性、「親切」「礼儀正しい」7割超、  「最近いらいらした」20代女性77%
東京(共同) 「日本人は親切」「勤勉」大幅増
時事 若者3割「努力報われない」=将来見通し、経済評価好転も


 これらの記事は統計数理研究所のおすすめポイントからひろっているだけ。http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/page2/index.html


 同研究所の吉野諒三調査科学研究センター長は「震災時の秩序だった行動が国民意識に反映されていると考えられる。一方で、海外で深刻化した経済不況やテロなども国内に目を向けるきっかけになった可能性がある」と話した。(産経)
 同研究所は「東日本大震災で東北の人たちが実直な対応をしているのを見聞きしたことが結果に表れているのではないか」と分析している。(東京)
 中村教授は「景気回復に向かう社会の雰囲気を受け、将来を楽観的に考える人が増えている」と指摘している。(日経)


 しかし、集計結果を参照すると「たいていの人は、他人の役にたとうとしている」(#2.12)が増える傾向で推移している。大震災の影響で突然変わったわけではないのだ。わかりやすい理由で解釈し自分たちでまとめたデータを無視している。そもそも、調査に答えている人はずっと「人のためになることをしたい」(#2.11)と思っている人が多いのだ。
 「生まれかわりたい国」(#9.22c)という設問は、5年前との比較だけ、理由を分析できるほどデータがない。それよりも20歳代の男女を別に見ると女性は7ポイント「よその国に生まれてきたい」が多いのが面白い。
 「日本人の性格(長所)」(#9.1)はそもそも、「勤勉」「ねばり強い」「親切」「礼儀正しい」が多く、元々一番多かった「ねばり強い」が4位に下がっているという傾向のほうが注目できる。確かに「親切」「礼儀正しい」は急激に増えているが、前回調査から増加する傾向にあったのだ。

 極端な解釈をすれば、調査を拒否した3割は、政府に協力することを拒んでいる。政府機関や調査ということを信用していない。社会(他人)に関わりたくない。税金を納めるのもいや。
そんな連中かもしれない。
「選挙への関心」(#8.6 )では87%が投票するとしている。実際の投票率と比べてみると調査を拒否するような人は選挙で投票に行かない傾向がありそうだ。