派遣問題にけりをつけるには労働のグローバル化だ

建築など現場工事がある業界では偽装請負は伝統的なやり方だ。そもそも人件費は「人工」という単位で計算する。
一人一日15000円〜20000円程度の作業員を明日何処どこの現場に何人入れてくれと電話すると翌朝作業員が現場の前で待っていると言う具合だ。当然作業の指示はその場で行われる。
実際労働者の収入は一日10000円程度。毎日仕事があればいいが、波がある。月20万も稼げれば良いところだろうか。
一応請負でやっている建前だが、実質は日雇い派遣だ。グッドウェルはそれを大規模にやった企業なんだな。

こういう偽装請負は「派遣」の定義がまたしっかりしていなかった頃から、現場の最前線を支える労働体制に組み込まれていた。
テレビ番組の製作現場も同じ構造だ。製作はプロダクションに丸投げ。演出や撮影・美術・照明・音響などの頭はフリーに頼むか、各専門の会社に丸投げ、実際に作業するそれぞれのアシスタントはアシスタント派遣会社や古株のアシスタント(チーフと呼ばれている)に頼んで集めてもらう。
フリーのカメラマンは自前でアシスタントを雇っていた。徒弟制度だったからだ。今でもそういうシステムでやっているカメラマンはごく一部になってしまった。

伝統的な職人の世界は一人前になると原則的にフリーになる。弟子をとるようになると親方と呼ばれるようになる。大きな仕事は職人を束ねる大親方が必要だ。大工なら棟梁だね。
流通業も似たような構造。店主がいて番頭、手代がいて下働き・丁稚がいる。
土木建築業や製造業、小売業、番組制作でもなんでも仕事は人が全てだった。産業革命以降、大層金がかかる装置や道具がなければならなくなってから質は変わってきた。
いつの間にか人は、機械の歯車どころか材料の一部に成り下がってしまったんだな。

先年、米国ではシナリオライターストライキがあってテレビドラマや映画の撮影ができず新しいコンテンツがなくなってしまったことがあった。連続ドラマが不連続になっちまった。シナリオライターはフリーだが組合があって皆そこに所属している。だから、フリーでも団交ができる仕組みになっているんだ。日本ではストライキをやっても形ばかりだ。組合に属してない場合も多く、そういう奴らはスト破りをするから、ストをやっても効き目が出ない。
労働者は全員組合に所属して団体交渉する出たてを持てばいいんだ。零細に下請け企業なんかも組合を持って団体交渉しないと大企業と対等にやりとりはできない。さらにスト破りは法律違反にするべきだ。
GMの労働者は会社がつぶれるというのに強気な態度を示す。組合員の給料は高い。トヨタが北米でシェアを伸ばしたのは人件費の差が効いたわけだ。人件費の安さを見込んで中国に工場を造るのと同じ理屈だ。
そうした構造を打破するためには労働のグローバル化をしないとならない。つまり、同一労働同一賃金の原則を国際間に拡げれば良い。
同一労働同一賃金といったら、労働者間の競争がなくなって技術が向上しないという間抜けな意見があった。同一労働とは生産性が同じと言うことだ。生産性が高い労働者は賃金も高くなる。技術向上に何の問題もない。経営者の論理にすっかり騙されてしまうバカが多くて困る。

日本の労働者は大企業経営者の論理に騙されていることを悟るべきだ。
家族的な年功序列経営は上場企業ではできない仕組みになっているのだ。企業経営がグローバル化したのなら、労働者もグローバル化しなければならないのだ。