自民党の終焉

 報道機関各社から世論調査が発表された。今回の世論調査に関して考えれば、不安定な政治状態になっているのは小泉が選挙後一年で総理を辞職したあと、解散総選挙もせずに三代も総理大臣を変えてきた与党の責任が大きいからであることが一つ。参院選で与党が数的不利になってからは、野党に妥協することなく強引な国会運営をしていることにも問題はある。麻生政権に対する不支持が増える傾向は与党の政権のすげかえ、国会運営が根底にあると考えられる。さらに、麻生総理本人の資質が疑われているのである。
 いずれにしても、政権発足当時から50%を切る支持率であり、次の選挙では野党に政権を移したいと考えている人の割合の方が多かったのである。大きな失政が無くても、国内の状況が悪化していけば支持が落ちるのは当然の帰結と考えられる。

 さて、国内の状況が悪化している原因は何だろうか。GDPの急激な低下は国民生活の悪化を如実に伝えている。世界的な経済不況になっている現状で日本の不況は致し方ない面があるが、これまでの政策に問題はなかったのだろうか。
 日本の政策金利は長期間ゼロ金利も含む超低金利であった。超低金利流動性を増やし金融機関を安定化させた。しかし、その流動性は外需関連企業と円キャリートレードに回されていたようだ。若干の消費の拡大も外需関連企業に引っ張られたものであり、輸出が滞れば一気に萎むものだったことははっきりした。賃金の上昇がほとんど見られない状況について懸念されていたが、それがはっきりと現れてきていると思う。また、流動性が高かったのにインフレがしなかったこと(むしろで多くの分野でデフレしていた)、即ち「流動性の罠」に対して有効な手を打つことができなかったことも原因だろう。超低金利政策による円キャリートレードの拡大が投機資金の拡大に大きく影響を与えていたことは無視できないことである。輸出の足枷になっている現在の円高傾向も円キャリートレード手仕舞いしようとする動きによるものである。彫金利政策によってだぶついた資金がサブプライムローン原油穀物の投機に回り結果的に国民生活に多大の混乱を与えているのである。

 戦後日本を総括的に眺めれば55年体制以降の自民党政権の政策は国民生活を豊かにした。しかし、1985年台後半のバブル景気以降おかしくなっている。バブル崩壊後の細川・羽田・村山と続いた非自民政権を挟んで橋本内閣以降の自民政権によって行われた政策による結末が現在の大不況につながっている。
 小選挙区制によって、生き延びた格好の自民党だったがそれは自民党が持っていた本来の機能も奪っていたと思う。社会党野党第一党だったときは与党の政策はそれに引っ張られていた。つまり社会民主主義の影響を強く受けていたのだが、社会党が崩壊し、対立軸になったのは新保守主義新自由主義的な野党であった。与党もそれに引っ張られることになる。冷戦構造が終わり、世界的に社会主義が後退したことも大きな要因だったことも理由になるだろう。

 不思議なことに新保守主義を標榜して自民党から離党した小沢一郎中道左派的な言動をして野党を引っ張っている。自民党小泉純一郎によって新自由主義の政党に変わり、その後政治的思想を欠いて右往左往の政党になった。自民党の終焉である。