改憲案を危惧する

憲法の日である。

改憲議論もこのところ下火だが、二大政党には改憲するつもりがあることを忘れてはいけない。

憲法改正案は5年前にその頃与党だった自民党から出ている。谷垣が今日した談話でもこの改正案は生きているようだ。
与党民主党も同じ年改正案ではないが提言という形で新憲法の方向性を発表している。
自民党改憲草案の中身は、「権力を制御する規範」から「国民を支配する規範」に変えられている。
憲法前文にある「わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し」という思想は見あたらず、かわりに「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概を持って自ら支え守る責務を共有」と「愛国心」思想に切り替えている。つづく「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」という権力を規制する部分も全く欠落した。
また、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という理念が削られ、「圧制や人権侵害を根絶させるために、不断の努力を行う」と変えられている。「不断の努力」とは何か?「他国とともにその実現のため、協力し合う。」ということのようだ。

自民党憲法草案
http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/051122_a.pdf

民主党の考え方は条文化されていないので比較しにくいが、例えば「共同の責務」という概念は「国家と社会と個人の協力の総和」ということのようで、自民党案の「国民の責務」と同じ思想に基づいている。
また、平和主義に関しては、武力の放棄も交戦権の放棄を盛り込まず、「制約された自衛権」として国連憲章51条が規定する「自衛権」を規定している。これには「集団的自衛権」が含まれており、国連多国籍軍において、国際紛争に参加する道を開いている。

両案とも現憲法の重要な理念を大きく変える改憲案であり、権力に都合の良いように変えられていることに国民は気付かなくてはならない。

民主党憲法提言
http://www.dpj.or.jp/news/files/SG0065.pdf